漫画読書感想文集

大好きな漫画や様々なことを思ったままに綴っていけたらと思っています。ネタバレも出てくるかと思いますので、連載中の作品を中心によくよくご注意くださいますよう

オールラウンダー廻

EDENの作者と長期連載2作品目。総合格闘技に関わる人々を取り上げています。とにかく格闘技を行っているシーンが多く、かなり具体的に描かれている(と思う。私はちょっと格闘技に疎いので確かなことがわからないですが)。

 

 廻(めぐる)と喬(たかし)

このタイトルの廻は「めぐる」と読みます。少年時代に一緒に空手をやっていた廻と喬が高校生の年齢になり(喬は高校に行っていないようですが)格闘技の世界で再び出会います。「再び出会う!」と言っても、そんなに劇的なものではなくて、お互いが格闘技をたまたまやっていたからです。

この2人の格闘技に対する姿勢は全く異なるものがあります。廻は以前に空手をやっていたこともあって、なんとなくその繋がりで趣味として格闘技を始めたという感じですが、喬は格闘技で食っていくと決めて取り組んでいます。それはプレースタイルにも表れていて、喬は圧倒的な実力で相手をねじ伏せる戦い方をしますが、廻はあまり特徴がないというか、ごちゃごちゃやっているうちに勝っちゃうスタイル(?)なんですよね。

廻は体勢の変化が起こる際になぜか有利なポジションをとることができたり、相手の技を比較的短時間にコピーしてしまうなど器用さが目立ちます。試合数を重ねるごとに少しずつ強くなっていく廻ですが、このプレイスタイルのせいもあり、喬は廻の活躍に対してどこか苛立ちのようなものを見せるようになります。廻に強くなってほしいと思う反面、ある種の”違い”をわかってほしいと願っているようです。

所属が異なるということもあり、作中の大部分において二人の会話シーンはそれほど多いわけではありまえん。廻はちょっと話したそうですが喬から話すことはほとんどありません。

しかし喬の中で廻の存在が大きくなっていきます。それが幼馴染だからなのか、プレースタイルへのいら立ちから来るものなのか何なのか……もしかしたらそれら全てを含んだものかもしれません。しっかりと描かれているわけではありませんが、喬は廻と対戦することになったら絶対に勝つ、という思いを少しずつ強くしていったはずです。

 

 

なぜ格闘技をするのか

豊富で緻密な格闘技シーンが描かれる本作ですが、この作品の中にはそれ以外のテーマも多く提示されているような気がします。

なかなか格闘技で食べていくことが難しい日本で格闘技を続ける意味はなんなのか。強さとはなんなのか。東日本大震災の被災地域での格闘技イベントも出てきます。格闘技ができる地域貢献とは何なのか。イベントを行うだけでなく被災地域でジムを運営されている方もいて、一人ひとりの格闘技との関わり方の違いも描かれます。

最初は趣味で始めたとしても、少しずつ試合に出はじめて夢中になり、どんどん強くなったときに果たしてプロを目指すのか、どこかに就職するのか。結婚して家族が増えても続けるのか。

果たして廻は強くなった先で、どうするのか。

(でもなんだかんだ作中で格闘技をやめちゃった人はいないよな)